立夏に入り、平野では田んぼに稲の苗が次々と植えられていく頃、山里ではあちらこちらに薄紅色の可愛らしい花が咲き出します。
タニウツギ(谷空木)です。
北海道西部から東北、北陸、山陰と、日本海側のいわゆる雪国に自生する落葉性の低木で、谷や沢など湿気のある場所でよく見ることができます。
撮影した遊佐町杉沢地区は鳥海山の南麓にある里山地区です。
地元庄内では「杉沢」と言えば鳥海山の山伏神楽「杉沢比山」で有名です。国指定重要無形民俗文化財に指定されています。
上の写真の真ん中あたりに黒々とした杉森がありますが、これは杉沢熊野神社境内になっており、毎年この境内で舞が行われます。
鎌倉時代から地域の住民が連綿と受け継ぎ、現在もほぼオリジナルの形で継承されているそうです。
そんな住民の皆さんも今は田植えで大忙しです。きれいな棚田です。
タニウツギは低木で薄紅色のかわいい花なので庭木には良いのかな、と思ったのですが、実は地域によっては忌み嫌われていて庭木にはむかないそうです。
山の斜面などに群生すると、山の斜面が真っ赤に染められて山火事を連想させるため「火事花」と言われるとか、材木を葬儀の際に骨を拾う箸に利用したため「葬式花」とか言われているのが理由だとか、こんなに綺麗なのにかわいそうな気がしますね。
山里では田んぼのあぜ道にもよく見かけます。
ちょっとしたアクセントになっていて、良いですよね。
タニウツギとは関係ない話ですが、田んぼのあぜ道は植物にとっては最適な環境のようです。
陽の光を全方位で受けることができて、水にも困りません。
農家の方は嫌がりますが、田んぼの縁取りがお花畑っていうのも見ている分には素敵ですよね。
やがて田植えも終わり、季節が初夏へと向かおうとしている頃、
雪国に自生するタニウツギはその美しい薄紅色を日に日に濃くし、里山を夏へと導くように咲くのです。
撮影DATE
Nikon Z 6
Nikkor Z 85mm f / 1.8 S
Nikkor Z 24-70mm f / 4 S